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作成: 2024-12-08
更新: 2025-01-09
作成: 2024-12-08 20:56
更新: 2025-01-09 03:38
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先週末の金曜日、今月の最初の金曜日だったため、米国労働省から月次非農業部門雇用統計が発表されました。
11月の統計によると、月間の新規雇用(ヘッドライン)は約22万人となり、これは堅調であると評価され、失業率はわずかに4.2%に上昇しましたが、これも許容範囲内であり、市場は「ゴルディロックス経済の継続」という反応を示しました。
以下は、企業調査による雇用(All employees, total nonfarm、黄色の実線)と家計調査による雇用(Employment level、黒色の点線)という、米国の雇用(仕事)動向に関する代表的な2つのデータの推移を示しています。
1940年代後半から同時に存在するようになった2つのデータの出発点が異なるため、絶対的な数値が常に異なるのは当然のように見えます。
しかし、重要なのは、その後に見られた区間の変化の推移ではないでしょうか。ちなみに、現在のヘッドライン(主要雇用指標)は、企業調査による雇用(All Employees, total nonfarm)であり、ニュースで引用されているのはこの数値です。
アメリカ雇用(企業調査vs.家計調査)
一方、家計調査で得られるデータは、雇用(Employment level)と失業(Unemplyment level)に分けられます。企業調査では失業データは得られないため、失業率(Unemployment rate)は失業者の数に基づいて算出され、家計を対象とした調査に基づいています。
私たちがニュースでよく目にする雇用のヘッドライン(企業調査)と失業(率)のヘッドライン(家計調査)の調査基準が異なるのです。
下のチャートは、家計調査から得られた雇用状況の回答(Employment level)と失業状況の回答(Unemployment level)、そしてこの2つを合わせた労働力人口(Civilian labor force = Employment + Unemployment level)を示しています。
ここで、失業者の数を労働力人口で割った比率が失業率[%]になります。
失業率データは、本質的に家計(個人)を対象とした調査からしか得られないため、この家計調査がヘッドラインになり、雇用状況は通常、調査以外にも企業の給与明細から得られるため、信頼性が高いと考えられており、雇用は企業調査がヘッドラインとなっています。
アメリカ家計調査:経済活動人口、雇用、失業
しかし、バイデン政権になってから、特に雇用関連データに興味深い乖離現象が多く見られるようになりました。
以下は、企業調査による雇用(黄色の線)と家計調査による雇用(黒色の点線)の前年同期比[YoY]の推移を比較したチャートです。
上で見たように、絶対的な数値は常に異なる可能性がありますが、数年にわたる特定の短期的な区間での変化の推移は、多少のずれはあっても、最終的には概ね同様に収束しながら動く傾向があります。
アメリカ雇用YoY推移(企業調査vs.家計調査)
ところが、およそ2022年半ば頃から、この2つの前年比変化率の差が徐々に広がり始め、最近では、過去のデータでは見られなかったほど過剰な乖離が生じています。
アメリカの株式市場に関する動画を通じて専門家の意見を聞いても、これについては様々な意見がありました。1)コロナ危機以降、家計調査の回答率が低下しているため、2)バイデン政権になってから共和党支持者の回答率が低下しているため、3)違法移民の影響によるものなど…
この中で、コロナ危機以降の回答率の問題だとすると、パンデミックが最も深刻だった2020年や2021年までは大きな乖離がなく、2022年半ば以降に乖離が始まったのは奇妙に見えます。
そして、バイデン政権における共和党支持者の回答率低下が原因だとすると、それは調査が雇用状況についてより悲観的に回答したことを意味するため、これも何か理由を付け加えるには適切ではないように思われます。
この3つのうち、最も納得できるのは3)の「違法移民の影響」です。
ニュースを通じて、バイデン政権発足からしばらく経った後から違法移民が急増したことをご存知でしょう。バイデン政権は2021年1月から始まったので、しばらく経ってから2022年前半以降にこの乖離現象が発生したのも、おおよそ時期的に合致しています。労働省の調査対象に、ここ数年に渡って流入した違法移民がリストに載っているはずがないからです。
つまり、ここ1年ほどの、過去にはほとんど見られなかった乖離の差は、以前に入国した違法移民が、元々アメリカにいたアメリカ市民の仕事に取って代わった(?)のかもしれません…と考えられます。
違法移民の影響を含む全体的な観点からは、雇用は依然として良好であると言えますが、既存のアメリカ市民の立場からは、雇用状況は過去の事例から見て、既に不況に突入しているように感じられるでしょう。
しかし、トランプ次期大統領は、就任と同時に新たな違法移民の流入を阻止するだけでなく、既に米国に入国している違法移民を強制送還する可能性もあると繰り返し述べていました。
では、これがアメリカの雇用市場にどのような影響を与えるのでしょうか。
既存のアメリカ市民にとっては、仕事仲間が減るので良いことかもしれませんが、全体的な量的な面では、少なくとも相当期間、縮小する可能性が高くなるでしょう。しばらくの間、アメリカの経済にプラスの影響を与えていたものが、逆転する可能性を生み出すことになります。この影響がどの程度になるのかを見ることも、今後のアメリカの経済と株式市場を判断する上で非常に重要なポイントになるでしょう。
先日、パウエル議長が講演でアメリカの経済は依然として良好だと述べましたが、このようなやや無理のあるデータがいくつか存在することを念頭に置いて、アメリカの株式市場に対する緊張感を緩めるべきではないと考えています。
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